加法定理とトレミーの定理



 三角関数の加法定理の証明には,いろいろな方法が考えられる。図形的な証明法の1つとして, トレミーの定理を用いた証明がある。
トレミーの定理とは,
右図のような円に内接する四角形\(\mathrm{ ABCD }\)において,
\(\mathrm{ AB・CD + BC・DA = AC・BD } \) 
が成立する, である。  図Ⅰのように,対角線\( \mathrm{ AC } \)の長さが 1 で,\( \mathrm{ AC } \)を直径とする円に内接する四角形\( \mathrm{ ABCD } \)を考える。 ここで,\( ∠\mathrm{ DAC }=\alpha \),\(∠\mathrm{ BAC }=\beta \) とすると, \(\mathrm{ AC }=1 \), \(∠\mathrm{ ABC }=∠\mathrm{ ADC }=90° \) より, \( \mathrm{ AB }=\cos\beta \), \( \mathrm{ BC }=\sin\beta \), \( \mathrm{ CD }=\sin\alpha \), \( \mathrm{ DA }=\cos\alpha \) であり, 正弦定理より, \( \mathrm{ BD }=\sin(\alpha+\beta) \) である。 ここでトレミーの定理より,
\( \cos\beta・\sin\alpha+\sin\beta・\cos\alpha = 1・\sin(\alpha+\beta) \)
\(\sin(\alpha+\beta) =\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta \) 
となり,加法定理が成立する。
 また,図Ⅱのように \( \mathrm{ AB }\ =\ 1\) で \( \mathrm{ AB } \) を直径とする円に内接する四角形\( \mathrm{ ABCD } \)において, \( ∠\mathrm{ BAD }=\alpha \), \(∠\mathrm{ BAC }=\beta \) とすると,
\( 1・\sin(\alpha-\beta) + \sin\beta・\cos\alpha =\cos\beta・\sin\alpha \)
\( \sin(\alpha-\beta) =\sin\alpha\cos\beta - \cos\alpha\sin\beta \)
となり,このときも成立することがわかる。
この状況では,\( 0\lt\alpha\lt\frac{\pi}{2} \),\( 0\lt\beta\lt\frac{\pi}{2} \) であったり, \( 0\lt\alpha\lt\beta\lt\frac{\pi}{2} \) であったりする。 ここで,
\( \sin(-\alpha)=-\sin\alpha \) , \( \sin(\frac{\pi}{2}-\alpha)=\cos\alpha \), \( \sin(\alpha+2n\pi )=\sin\alpha (n は整数)\)
などを利用することにより,一般角における加法定理を証明することが可能である。